「韓国」入換機関車2118号にイソウロウ
〜後編〜



富谷機関車事務所(儀旺)での出張入換任務を果たし、ネグラへ帰る道中にイソウロウする。

↑鉄道の町、儀旺駅の貨物発着線10番線で出発待機中です。

→前編はコチラ
 

列車番号L4210、儀旺発車!

 

指令からの出発指示でL4210列車はゆっくりと出発します。今回のL4210は急遽の機関車故障での事業用回送ですので、定まったダイヤに沿って走る列車ではなく、指令からの指示により出発/走行/停車を行います。時刻表の無い分、超過密の京釜線では速度加減が難しく、難易度の高い乗務になります。機関士リュウギユンさんは難易度の高い乗務にも臆する事無く、入換機2118号を操ります。

いざ、京釜電鉄線!
 

まずは京釜電鉄線走行指示があり、列車は駅構内の複雑なポイントを渡り、架線の下に入ります。

ひっきりなしに行き交う通勤電車のわずかな隙間に車齢35年の入換用DLが食い込んで行きます。

今回の行路は儀旺〜ソウル〜水色。言わば新鶴見〜東京〜田端をDD13やDE10の単機で走破するような感覚です。

ちなみに「京釜電鉄線」は京釜線複々線のうち、通勤電車の線路(→209系の走る京浜東北線)を指し、「京釜本線」はセマウル号などが走る長距離列車線(→113系や特急が走る東海道本線)を指します。

電鉄線を走る

 



2118号の単機回送L4210列車は電鉄線を走ります。


(右上) 先ほど走った南部貨物基地線を頭上に見ます

電鉄線の運転

 通常この区間を走る通勤電車(電鉄線電動車)は基本的に各駅停車のみですが、ダイヤの乱れの調整等の場合は稀に長距離列車も電鉄線走行の措置をとる場合もあります。JR西日本の大阪圏の東海道本線のように緻密では有りませんが、数駅毎に本線-電鉄線の渡り線があります。

今回は優先順位の低い事業用の回送列車ですので。定期旅客列車に影響を与えずに走る必要が有ります。電鉄線を走る場合、約40Km/hである通勤電車の表定速度を踏まえて、微妙に速度調整が必要です。ずっと40Km/hの一定速度で走ると、駅停車中の先行列車に追いついてしまい、加速中の後続の列車が追いついてしまうため、駅の前後で微妙に速度を上下させます。また、今回はバック運転になる為、速度計がリュウギユン機関士の背後になり、見ることが出来ません。今現在、何Km/hで走っているか、線内のダイヤに影響を及ぼさず適切に走っているかは機関士さんの経験に頼ることになります。

 

軍浦駅通過!

 



最初の通過駅、軍浦駅を通過します。入換機で通勤電車のホームを通過するのは不思議な気分になります。

電鉄線走行中@

ガタガタと小刻みに振動しながら列車は水色に向けて北上します。

衿井駅通過

安山/果川線が分岐する衿井駅を通過します。軽く汽笛を鳴らしながらホームの乗客に注意を促します
 

電鉄線走行中A




複々線の外側、電鉄線をひた走ります。速度は30Km/h〜50Km/hの間を微調整しながら着実に走って行きます。普段は水色の構内で入換する2118号が大都市ソウル近郊の複々線区間を単行で走る姿は開放感満点に見えます。




リュウギユン機関士も信号歓呼に熱が入ります。

鳴鶴駅通過

 



長距離線の無窮花号に追い越されながらひた走ると鳴鶴駅に差し掛かりました。エンジンを回しながらそろそろと通過!

閉塞進行!

 
電鉄線の信号機(左)と長距離線の信号機(右)両者の信号機の緑は電鉄線が青っぽく、長距離線は真緑になっており、夜間走行時も間違えないように配慮されています。

ちなみに電鉄線の3灯式信号機は黄(上)と緑(下)を同時点灯することで減速現示をします。

進行

減速
(65Km/h)

注意
(45Km/h)

停止

安養駅通過!

2118号が安養駅に指しかかろうとした時、ものすごい速度で特急セマウル号が駆け抜けて行きました。

 
電鉄線走行中B

 

列車は着実にソウルに近付いてゆきます。車窓にも高層マンションが増え、韓国的な都会の風景が広がって行きます。

電鉄線走行中C

 



先行列車に追いついて来たとの事で、2118号は速度を落として行きます。



 

石水駅通過!

 


機関車2118号は石水駅を通過します。


(右上) ホームで電車を待つ人々も、ちょっと物珍しそうに古豪機関車の通過を見つめていました。
 

KTX合流点〜始興駅

 

KTX合流点(右上)を通過後、「始興駅通過後、長距離線に入ります」との連絡を受けます。始興駅に差し掛かり、減速しながらホームを通過して行きます。
 

セマウル号をやり過ごす

始興駅のホームを越える頃、右後方からセマウル号が颯爽と通過して行きました。2118号単機の列車番号L4210列車はこのセマウル号の後に本線(長距離線)に入ります。本線入りを目前に停止信号にてしばし待機。

 

さぁ!行こう!

程なく信号機が変わり、列車はこれから長距離線に入ります。「チャガジャ〜!(さぁ行こう!)」とリュウギユン機関士は静かにノッチを入れました。
 

長距離線進入!

 


2118号は渡り線を渡り電鉄線から長距離線へと入ってゆきます。

頑張れ2118号!

 



長距離線に入ると一転して2118号はフルスロットルで走ります。表定速度40Km/h台の電鉄線とは違い、100Km/h超のセマウル号、無窮花号がせわしなく走る特急街道では「ひたすら逃げる」走りをします。

 

長距離線を快走!

 

列車は禿山〜加里峰と通過、左手に九老の電動車事務所が見えると下り電鉄線が頭上を通り左側に移動し(6,7番)、九老駅に差し掛かります(8,9番)。


(5番)2118号は最高速度105Km/hのスペックとなっていますが、車齢や安全性を考慮して現在は実務上70Km/h以上出すことは稀です。

3複線の大動脈

 

エンジンを唸らせ70Km/hの速度を持続しながら2118号は京釜線に京仁急行線を加えた3複線区間へと入って行きました。

(2番) 新道林では新CI通勤電車の試運転とすれ違い。

(3番) 一日10本程しか通過列車の無い永登浦駅駅も70Km/hで通過!

(6番) 新吉駅から左側の電鉄線は高いところを走り大方駅(8番)の真下を長距離線がくぐります。電鉄線が右に来れば鷺梁津駅。


この間2118号のエンジンは終始唸りっぱなしです。

 

漢江鉄橋!

2118号は漢江鉄橋を通過!水面上でセマウル号とすれ違います。

 

龍山〜南営

 

(1番)ソウル動車事務所が左手に見えると龍山駅です。

(2番)2118号は龍山駅の通過線を走ります。

(4,5番)龍山線が左に分かれて行きます。

(7,8番)南営駅では初抵抗電車が停車中。

ソウル駅到着

 

列車はソウル駅に到着。旅客ホームの無い機回し線上に停車します。

(下段中) 我々を追い抜いてきたセマウル号や無窮花号が一足先に休んでいました。

ソウル駅で出発待機中

 

(上段中、右)ソウル駅で入換中の同じ2100号代の入換機としばしランデブー

(左下)機関士さん同士もランデブー(?)。

ソウル駅発車!!

 

指令からの発車指示で2118号はソウル駅を出発します。

(4〜6番)前方の踏切で障害発生!5角形の特殊信号発光装置の赤灯が回転発光します。韓国では赤灯が1灯づつ発光回転します。

(7〜9番)無線連絡で安全を確認して踏み切りを通過します。

京義線を走る

 





ソウルからは京義線に入り水色のネグラを目指します。

(4〜6番)新村駅を通過!列車は加速します。

加佐駅通過

 




左手に龍山線が合流すると加佐駅になります。

(右下)白いポールに「つ」の字の曲線。通票閉塞の龍山線用のタブレットキャッチャーが見えます。

 

水色は近い!

 

頭上に水色出発線をくぐると、左手に水色の車両基地が広がります。程なく水色駅のホームが現れ、その先に今回の目的地、ソウル機関車事務所(機関庫)が見えてきました。水色駅を通過完了し機関庫の構内に入った時点でL4210列車は運行完了扱い。ここからは構内移動です。

機関庫到着〜!

 

2118号は機関庫の構内を徐行して走り、ターンテーブル前の停止位置に静かに停車しました。

今回の乗務はここまで。これより先は2118号は入換機として構内入換の仕事に戻りますので、本線機関士であるリュウギユンさんから入換係の機関士さんにバトンタッチします。

リュウギユン機関士、安全運転お疲れ様でした!

2118号を後にする


↑2118号を降りて機関士リュウギユンさんを記念撮影

韓国の古豪入換機2100号代。入換機ながら小運転にも大活躍の機関車ですが、その役目を大量増備された新鋭の4400号に受け渡す時が近付きつつあります。しかし車齢35年の縁の下の力持ちが本線で若い列車に混じり過密ダイヤを縫って走る姿は、まだまだその強力な健在振りを感じさせられました。

入換機2100号代はこれからも韓国の鉄道シーンを支える「名脇役」として最後の活躍を願いつつ2118号を後にした

イソウロウ記録

2004年 1月
 


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