「韓国」京義線セマウル号にイソウロウ

〜後編 ソウルへ帰ろう〜


「臨津江ライナー」こと京義線セマウル列車。臨津江駅にて休息中。


↑ソウルからの一仕事を終え、側線に佇むPP動車。
しばし休んだ後、ソウルへの帰路の旅が始まります。
 

臨津江ライナー、休息中

 

ソウルから52.0kmを走破したセマウル号。終着駅の臨津江駅に到着後、側線に退避し、16時30分発のセマウル号1074列車となります。乗務員さんは出発までの時間に車両清掃などを済ませて、休憩となります。

臨津江駅の風景

 

軍事境界線間近・民間人統制線の直前に位置する臨津江駅。臨津閣やDMZ観光の窓口としてその名の知られた駅ですが、列車の来ない時間はのどかな雰囲気に包まれています。

(左上) 臨津江駅の駅名板。統一を願う思いから、北隣が平壌、南隣がソウルと表記されています。
 

臨津江ライナーの気動車

 

臨津江ライナーに使用される現代'87年型(の2次型)列車をクローズアップ。

1987年に初登場した「洗濯板」こと1次型に比べ、顔に丸みを帯びより流線型になっています。この顔から誰もに知られた現代タイプのセマウル号の顔へと発展して行きます。

なお、「洗濯板」こと102号を連結した編成は大邱〜鎮海間のセマウル号で運行中です。

臨津江ライナーの編成のディテール

 

さらに外観を撮りまくりです^^ゞこの編成は6両固定の前後動力。エンジンはドイツmtu社の1500PSを前後に1基づつ、編成で3000PSとなります。また、2号車は半室食堂車(閉鎖中)・客室部分は旧太極室として当時のセマウル号でもひときわの豪華車両でした。

この編成は2004年頃から出番が減っていましたが、今回の臨津江ライナー設定を機に龍山車両事務所で動力推進軸の交換をはじめ、エンジン周辺などを再整備されました。

編成図

6号車(MC)

5号車(T)

4号車(T)

3号車(T)

2号車(TD)

1号車(MC)

107

301

501

305

601

108

運転室・動力室・一般室

一般室

一般室

一般室

一般室(半室食堂:閉鎖)

運転室・動力室・一般室

←SEOUL

 

 

 

 

臨津江→


臨津江駅のマスコット

 

臨津江駅の片隅には犬の親子が飼われています。おとなしく落ち着いたお母さんと何でも興味津々の子犬はここが軍事境界線に近いと言う緊張感すら和ませてくれます(*^^*)

(下3枚) 子犬は一日2回訪れるいつもと違う列車に興味津々!列車とカメラの前を行ったり来たり。「ねぇねぇ、あの汽車はどこに行くの〜」って言っているようです^^;;
 


16時00分、出発準備!

 

出発30分前、「そろそろ行くよ〜」と機関士さん。ソウル行き1074列車として出発準備を行います。ATSの起動からエンジンの点検と手際良く出発準備を進めます。

出発準備完了

 
出発準備を終えて列車は再び落ち着きを取り戻します。

この後16時13分着の通勤2019列車の到着・発車を待って、我々の列車はホーム側主線に転線入換作業を行います。

16時16分、通勤2019列車到着

  

ソウルからの通勤2019列車が3分遅れで到着。3分ほど停車して乗客を降ろし、回送列車として都羅山駅へ向けて出発して行きました。

16時21分、入換開始!

 

都羅山に向けてCDCが出て行くと、我々の列車はすぐさま主線に転線、ホームに横付けして乗客を待ちます。
 

発車を待つ

 

再び運転室へ。発車まであと7分。今回はどの位乗客が乗ってくるのかを話題に16時30分の発車を待ちます。

16時25分、改札開始

 

発車5分前に改札が始まり、3名の乗客が乗って来ました。平日の観光地、設定したばかりの特急列車だっただけに少し心配でしたが、ゼロでなくて良かったです^^;

いらっしゃいませ〜☆

16時30分、臨津江発車!

 

程なく発車合図の無線で列車は定刻に臨津江駅を出発します。来た道を走ること8分、ムン山駅へと到着。ここでも親子連れやビジネスマンなど8人の乗車がありました☆
 

ムン山発車

 

すぐに出発信号機が進行現示になり、我々の列車は定刻の16時39分、ムン山駅を発車しました。

ムン山〜金村

 

ムン山駅を出発した列車はいくつもの工事区間を走ります。工事区間の徐行により1分遅れの16時49分、金村駅に到着します。

 

金村駅到着

 

ホームに滑り込むと丁度ソウルからの通勤2021列車も入線して来ました。この日の通勤列車は軍人さんの利用者が多く、この辺りが軍事的な最前線に近い現実を目の当たりにします。

 

15時51分、金村発車

 

多くの降車客を待って列車はソウルを目指します。我々の列車にも2名の乗客が乗って来ました。
 

金村〜一山

 

電鉄&高架工事真っ只中の金村駅を後にして、列車は次の停車駅、一山駅へと走ります。この辺りは路線改良も行われているため、路線最高速度の90km/hでもスムーズな乗り心地で列車は走り抜けます♪
 

17時00分、一山駅到着

 

かくして列車は定刻より2分早着の17時丁度に最後の停車駅、一山駅に到着です。残念ながらホームには人影がありません…(T_T)

1074列車、出発待機中

 

列車は一山駅で3分ほど停車し、定刻で出発します。
 

一山駅を後にして

 

一山駅を後にした列車は再び快走します。白馬駅(5番)、谷山駅(8番)と軽く通過し、着々とソウルを目指します。

一山の市街地を抜けて

 

一山の市街地に林立した高層アパートを背後に列車は田園地帯を走ります。

大谷駅〜陵谷駅

 

列車は大谷駅を通過(1,2番)、議政府からの郊外線が左に寄り添ってくると陵谷駅です。本来は通過駅ですが、往路の時と同じく、退避予定の対向列車が遅れており、我々の列車がまたまた先着してしまいました。17時14分、定刻の2分早着でホームに入ります。

列車が止まって程なく無線が。「2023列車(対向列車)4分遅れです」

17時20分、通勤2023列車到着 〜 陵谷発車

 

ようやく4分遅れでソウルからの対向列車が到着。早着した2分と合わせて6分の運転停車の後、我々の列車も4分遅れで出発。やがて右手にKTXが見えて来ると前方には幸信駅(8番)です。電鉄開業時には電鉄ホームが2面にKTXホームを持つターミナル駅へと生まれ変わろうとしています。

江梅駅 〜 花田駅

 

列車は江梅駅を通過するとKTXの入出庫線や工事中の電鉄線が複雑に絡み合い、花田駅(8番)ですべてが合流します。ここから線路はゴージャスな複線電化となります。
 

15時28分、水色駅通過

 

列車はいよいよソウル市に入り、水色駅を通過。右側には広大な側線群と留置車両が広がります。

(5番) 水色の留置線では旧セマウル号の食堂車をラッピングした「ワイントレイン」が休息中でした
 

京義電鉄線分岐点

 

水色の車両基地終端近くで右手に地下へ通じるトンネル工事がありました。

京義電鉄線はここから分かれて地下区間に入り、(地下)加佐駅から旧龍山線ルート(の地下)で龍山へと向かいます。

 

ラストスパート

 

列車は軽快に走ります。この辺りから無線もひっきりなしに鳴るようになり、列車が韓国有数の超過密区間に戻って来た事を実感させます。

新村へ向けて

 

8200号が牽引する湖南線からの無窮花号の回送とすれ違うと、左手にはバスレーンを持つ広い通りと大きな大学のキャンパスが見えて来ました。程なく視線の先に新村駅の大きな建物が姿を現しました(9番)。
 

新村駅通過!

 

列車は真新しい新村駅を通過します。駅を跨ぐ巨大なファッションビルの迫力に圧倒です。
 

あと1駅

 

新村駅を後にして数本のトンネルをくぐって行きます。閉塞信号機が減速(2番)-注意(5番)-警戒(7番)と続き、それに合わせて列車も減速して行きます。

到着線変更

 

前方に停止信号が現れた頃、せわしない無線の中で我々を呼ぶ声が。

ソウル「こちらソウル駅、1074列車どうぞ」
1074列車「こちら1074列車」
ソウル「到着12番線予定でしたが、10番線に変更します。ATS入換モードにて進入してください。念の為、進路の目視確認もお願いします。そして1172列車が12番線に入ってください」

1074列車「了解。1074列車10番進入」
1172列車「了解。1172列車12番進入」

今日は冬季臨時列車の1172列車運転の関係で、我々の1074列車は予定番線を10番線に変更となります。

停止信号の下、入換信号と入線10番線が開通現示になりました。
 

西小門踏切を渡る


15km/h以下の最徐行で入換信号を越え、西小門踏切を通過します。

(3番) 入換信号を越えると指令室にも構内入線の表示が出るため、再度無線を受けます。「1074列車、10番入線してください」「了解、1074列車10番進入」


ソウル駅接近

 

夕暮れの視界の先ではソウル駅前に林立するビルの灯が見えて来ました。

入換モードでの最高速度は15km/h以下。列車は自転車のような速度で前方注視・安全確認を行いながら慎重に入線します。
 

前方注視・安全確認




機関士さんは2人で前方注視を行い、分岐器の進路が10番線に向いているか確認を行いながら進入します。

列車は終着駅目前にして緊張が続きます。

17時41分、セマウル第1074列車、ソウル駅到着

 

列車は複雑な分岐機を確認しながらソウル駅構内を4分掛けて慎重に入線。最後部の車両が最後の分岐機を通過し終えたのを確認。少し加速して17時41分、定刻の7分遅れでソウル駅10番線へと入線しました。

ソウルから往復の乗務、安全運転お疲れ様でした(^_^)

ソウル駅無事到着、お疲れ様でした〜

 

機関士さんにお礼を言ってホームに降り立ちます。夕暮れの寒さが身にしみるソウル駅10番ホーム。冬の京義線を頑張って走ったこの気動車も仕事を終え、安堵の表情に見えます。

1074列車と1172列車

 

10数人の乗客を降ろしたホームはすぐに閑散となります。隣の12番線には太白線古汗駅からの冬季団体列車、8200号電気機関車に牽かれたセマウル号1172列車が停車中でした(下2枚)

1172列車は「Hi-Oneスキー列車」。スキーリゾートとのタイアップによる韓国版シュプール号といった感じの列車で、スキー場とソウルを結ぶ専用車両による列車です。

この列車の編成は韓国のジョイフルトレイン「レディーバード(11300系)」に専用のラッピングを施した編成で、電源車不要の8200号の利を活かして電源車無しの9両+機関車の編成で

ソウル〜(京釜線)〜龍山〜(京元線)〜清涼里〜(中央線)〜堤川〜(太白線)〜古汗

の経路を一日1往復の運転で活躍中です。
 


京義線セマウル号を後にする

1074列車は10分ほど停車して、龍山の車庫へと回送されて行きました。大邱〜鎮海間のセマウル号と共に2006年に誕生した新しいセマウル号とその任を負う初期型の気動車。大都市間のみの長距離輸送から近郊中核都市区間の速達輸送へ新しい需要開拓とその可能性を試されるセマウル号。その挑戦はまだ始まったばかりですが、これからも末永く、また他路線の活性化のお手本となることを期待しつつ遠ざかる老兵気動車を見送った。

イソウロウ日時
2007年1月


  トップページへ
HOME