「韓国」KR五松基地にイソウロウ



絶滅種の楽園、韓国機関車のジュラシックパークに生きる古豪に会いに行く

↑これは現実なのか!?絶滅したはずの機関車が整備も凛々しく集います。
 


KTXの保線最前線、KR(韓国鉄道施設公団)施設整備事務所。

ソウルからKTXに乗り、天安牙山駅を出ると右手に広大な保線基地が広がります。そこが五松基地こと韓国鉄道施設公団(KR)施設整備事務所です。
 

五松基地にイソウロウ開始!

 

忠清道に位置するKR五松基地は2004年4月に開業したKTX(韓国高速鉄道)の保線や設備維持研究の最前線です。

KTX開業前はここを起点に試運転が行われ、多くのデータが採集されました。高速鉄道開業までの間、多くのノウハウを蓄積して来た五松基地の現在は保線の最前線基地であると共に、韓国高速鉄道を更に良いものにするべく日夜研究を進める拠点となっています。

国家保安上の重要な施設でありながら今回は特別に取材のOKを頂きました。
 

KTXの保線拠点
 


警備室で受付を済ませ、いざ中に入ります。広大な敷地は車で移動します。

敷地内には研究施設や広大な保線車両留置線など大きなスケールに驚きです。





 

KTX広報館

 

五松基地の敷地内にはKTX広報館があります。韓国鉄道の未来を拓くKTXのPRの為に建てられた施設です。KTX試運転時は多くの報道陣や関係者を招きいれ、夢の高速鉄道を大いに伝えました。

広報館野外展示物

 



KTX広報館の前にはトンネルや橋梁、電気設備の模型があります。

KTX実物大モックアップ

 

さらに目玉展示物のKTX車両のモックアップ。

実際の車両を切り継ぎし、運転室の真上にパンタグラフの有る姿は韓国一大掛かりでマニアックな1435mmゲージの自由形模型かウソ電の風貌です^^;;

モックアップを楽しむ

 

見ているだけでも楽しいモックアップを様々な角度から。

(上中央) 遠くにKTXロゴのあるトンネルが見えます。KTXの試運転時にはロゴの入ったトンネルを抜けるKTXの写真をよく見ましたが、全てこのトンネルで撮影された物です。本物のKTXが走るトンネルを遠く見つめるモックアップの後姿は100系新幹線のようです^^;

 

モックアップ室内

 

モックアップの中へ入ります。実物の物とほぼ同じ運転室があり、実際に無段ノッチのハンドルや機器類を動かし、その感覚を体感出来ます。

KTXを運転した気分に浸れる空間、はたまたほぼ同型機器のTGV-Dをも運転した気分に浸れる最高の場所です。(私も年甲斐も無くガチャガチャやってしまいました^^;)
 

次行ってみましょう〜!



ひとしきりKTX(?)を堪能した後は、広い構内を車で移動します。

広い構内夜行く

 


構内には保線用車両が夜の保線業務を控えて休息中でした。少し離れた本線を時折轟音を上げて颯爽とKTXが駆け抜けます。
 

HSR350X発見!

 


構内にG7ことHSR350Xの姿を発見!TGVの技術を元に韓国式に発展した2002年産まれの高速車両です。

HSR350Xはここ五松基地を住処とし、今なお各種の走行試験が繰り返されています。

 

HSR350Xのディテール

 

韓国版のWIN350,300X,STAR21と言ったところのHSR350X。試運転準備中のディテールをキャッチします。

(左上) HSR350Xは「G7高速電鉄技術開発事業」というプロジェクトの一環で作られた車両です。運転室後方側面には開発に携わった事業者の名前がズラリ。

(左中・右下) 各種試験を行う為に数種類の台車を履いています。

 

DLのネグラへ

 



HSR350Xに別れを告げて、いよいよ今回の本命であるDL車庫に向かいます。
 

いざ、DLの機関区へ

 

車で構内を走る事5分、DLの機関区に到着しました。
 

機関区の情景

 

念願のDL機関区には、韓国ではもう絶滅したと思われた多数のDLが活き活きとした姿で佇んでいました。高出力の特大型機関車の投入で韓国国鉄を除籍、KTXの建設に大活躍をした古豪DL達です。現在も保線資材の運搬に、大邱〜釜山の第2期工事の最前線で活躍しています。

日本で言えば新幹線の保線基地内にDF50,DD13,DD54等が現役でたむろする機関区があるようなニュアンスで、まさに「韓国DLのジュラシックパーク」。この風景が現実の物なのか一瞬目を疑ってしまいます。
 

どっこい生きてるクラシックエンジン

 


構内には往年を飾ったDLが多数休息しています。4100号、4200号、6200号…蒼蒼たる面々が夜間の保線作業に備えて待機中でした。


(右下) 機関区の隣をKTXが300Km/hで走り抜けます。
 

五松のクラシックエンジン@ 4100号DL(EMD-G12)

 


韓国初の12Vのエンジンを積んだ中型機関車4000号の発展系です。ダイナミックブレーキを積んで機器配置を変更した為、運転台側エンドにある大きな放熱機が最大の特徴です。


1,310馬力のエンジンと105km/hの最高速度で貨物小運転や地方のピドゥルギ/統一号の先頭に立ち活躍しました。

4100号のディテール

 

4100号のディテールを観察します。アメリカ生まれのセミセンターキャブのデザインは台灣鐵路局のR20/R50型機関車(G12-U6)の親戚でもあります。
 

五松のクラシックエンジンA 4200号DL(EMD-G22)

 

4100号のキャブエンド側の視界を改善したDL。正面外観はお馴染みの特大型DL(7100〜7500)に前方ステップが付いたような風貌です。韓国国鉄にも最近までソウル近郊の短距離貨物列車の先頭に立ち、活躍していましたが、現在は最後の1両が休車状態となっています。

ここ五松基地には10数両もの動ける仲間が健在。本線では風前の灯の機関車もここでは多数派です。
 

4200号のディテール

 

一部の車両には後方エンドに梯子が設置されていますが(右下)、ほとんどが往年の姿を残し、整備状態も大変良好です。

なお、トップナンバーの4201号も現役です。
 

五松のクラシックエンジンB 5000号DL(EMD-SD9)

 



アメリカの名機SD-9は韓国では5000号台として活躍していました。16バルブのエンジンを積んで韓国の主要幹線で貨物を中心に活躍しました。

日本から飛行機で数時間。時差もない世界に現役のSD-9が健在です。


ちなみに黒とオレンジのこの塗色は韓国鉄道庁の旧塗色で「虎」と呼ばれています。

5000号のディテール

 

「虎」の衣をまとった5000号の各部を観察します。

(中央上) 5000号は長いエンド側が正面向きです。
 

5000号のキャブ

 



SD-9こと5000号「虎」のキャブを見せて頂きました。

1957年に製造された5000号、日本ではED70やモハ80と同期生。本家アメリカのサザンパシフィック鉄道では特別用途に用いられていたこのSD-9を「キャデラック」と呼んでいたとの事です。


(中央左) ゆったりした運転室はキャデラックの愛称の如くに見えます。


(中央右) 後に設置されたATS関連機器は日本製が多用されていました。
 

整備工場内部にイソウロウ



いよいよ整備工場の中へ。DLだけでなく黄色い保線車両も整備を受けており、最新のコンピューター設備も多数です。


整備を受ける古豪機関車達がマッサージを受けながら気持ち良さそうに昼寝していました。
 

整備工場の風景







綺麗に整理された整備工場の内部。古豪のDLから保線用のモーターカー、バラスト貨車までをリフレッシュさせる整備工場は最新にて一流の整備が行われます。

整備工場の虎の穴

 

整備工場の中のDL達。4000号やもう1つの虎、6200号が待機していました。

虎穴に入って虎ゲットな瞬間です^^;

(右下) 左が4200号で右が6200号。両者の大きさの違いが一目瞭然です。
  

整備工場事務所にて





ひとしきり見学を追え、事務所で少し休息を取ります。

事務所の掲示ボードには貨車や機関車の配置が一目で判るようになっています。

新旧機関士、夢の対談



事務所には国鉄OBのベテラン機関士さんがいらっしゃいました。本線機関士の頃はまだまだ現役だったパシやミカと言った蒸気機関車の乗務もされたと言う韓国機関士界の大先輩のお話は興味津々でした。


今回同行した現役の機関士リュウ・ギユンさんと機関車の今昔について夢の対談会が行われました。

韓国最後の虎DL6106號(EMD-SDP28)

最後に取って置きの「虎」を見せて頂きました。もう全車解体され姿は残っていないと思われた大型機関車6100号が健在!ガレージの中で大切に保管されていました。

静態保存機〜6100号

 

6106号は補修用の部品が調達できない為、もう動く事は出来ません。しかしそんな韓国最後の6100号は雨露を避け人知れず大切に静態保存されていました。

 

KR五松基地を後にする

韓国鉄道に新しい歴史を築いた高速鉄道KTX、そしてそこまでの歴史を築いてきた古豪DL達、これからの歴史を刻む新型車両。KTXの車窓から見える保線基地は単なる保線拠点にあらず知られざる韓国鉄道の歴史が凝縮混在しています。古豪DL達が末永くこの歴史の流れを見守っていて欲しい気持ち一杯に五松基地を後にした…

イソウロウ日時
2004年8月
 


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