「韓国」夜の首都圏電鉄線にイソウロウ
〜第2部 京釜電鉄 初抵抗電車〜

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眠らない街、夜のソウルの通勤電車にイソウロウする。

↑ソウル首都圏電鉄線の1大ターミナル、九老駅。ここから京釜電鉄線に乗ってソウル駅を目指します。

 

九老駅の風景

韓国ソウルの通勤電車最大のネグラ、九老電動車事務所(電車区)のお膝元、九老駅は韓国の通勤電車最大のターミナル駅です。5面のホームにはソウル駅〜清涼里〜城北〜議政府方面、水原〜餅店方面、富平〜朱安〜仁川方面と数多くの列車が発着します。

九老駅略図(諸事情により厳密な配線図は載せられないので略図です。ご参考程度にして下さい)
 



九老駅は5面のホームに1番〜9番の乗り場があります。京釜本線(10,11番)は長距離線で全列車通過のためホームはありません。

5〜9番線は京仁急行の他に入出庫列車や区間列車も乗り入れます。


さぁ!イソウロウ開始です!


2番ホームで待機していると、我々の乗る列車がやって来ました。




第2部はこの電車、最後の活躍をする初抵抗電車に添乗します。

日本からやって来た「元祖電鉄電動車」
 

1974年の電鉄線電化完成時に日本から輸入されたのがこの初抵抗(日本式呼称:初代1000系)電車です。JRの301系や103系1500番台のような顔を持った電車はその後、韓国製の仲間も加わり、韓国の近代化を運んで来ました。

登場から30年になろうとするこの電車も相次ぐ新型車の導入で、2004年6月にこのタイプの先頭車は惜しまれながら全廃しました。

初抵抗電車、発車!

 

いよいよ発車の時が来ました。ノッチが入り列車は動き出します。
 

京釜電鉄線を快走




列車は快調にソウル駅に向けて走ります。他の車両に比べると運転席の窓は小振りですが、この窓から発展してゆくソウルの街並みを見届けてきた「歴史の証人」でもあります。

新道林駅到着

 

列車はソウル2号線乗換駅、新道林駅に到着します。
 

新道林駅発車!

 

しばらく停車して、戸閉め後、すぐに発車します。

永登浦駅到着

列車は着実に走り永登浦に到着します。雨なのでブレーキには細心の注意を払います。
 

快走!初抵抗



運転室の窓から後部の様子を見ます。10両の堂々編成が連なって夜のソウルを駆け抜けます。

車内の風景

日中に取材した車内の様子。標準軌ゆえに日本よりは中が広くなっています。

(中央上) 「冷房改造施行 造船公社
(後の韓進重工業)」と書かれたプレートが取り付けられていました…
 

新吉駅到着

 

列車は5号線乗換駅の新吉駅に到着します。

電車は走る


新吉駅を発車列車は3複線の一番左を走ります。ちなみに左から

京釜電鉄線上り(現在走行中)
京釜電鉄線下り

京釜電鉄線上り龍山行き(京仁急行)
京釜電鉄線下り(京仁急行)

長距離線上り
長距離線下り

となっています。



 
大方駅到着

 


列車は大方駅に到着。一番右を走っていた長距離線はこの駅の真下を通り、大方駅を出たところで左側に現れます。

(左下) 運転助手席に置かれた箱はTIS(Train Information System)と呼ばれる通信機器です。

大方出発〜鷺梁津駅へ

 



大方駅を出発し、左手に長距離線が合流したら、鷺梁津駅に到着します。

鷺梁津駅の風景

ソウルの築地とも言われる鷺梁津駅の風景。大きな魚市場も近く、朝晩は無窮花号も停車する駅は終日賑わっています。

鷺梁津駅発車!



列車はフルノッチで駅を出発。漢江越えに向けて勾配を登って行きます。

漢江鉄橋だ!

 


列車は現代ソウル電鉄線の象徴、漢江鉄橋に差し掛かります。

漢江を渡る

 

美しい車窓を横目に列車は漢江鉄橋を渡って行きます。


漢江鉄橋を渡る初抵抗電車。韓国の近代化の原動力はここにありと言った感じです。

龍山駅到着

 



漢江鉄橋を渡り終えると、新鋭のターミナル駅に生まれ変わった龍山駅に到着します。

最新デザインの小奇麗な駅構内にも古豪電車は我が物顔で停車します。
 

龍山駅発車!

 

列車は昼のように明るい龍山駅を後にして再度夜の鉄路へと踏み出します。

KTXと離合!

 



雨にぬれた前面に3つのライトが近付いてきた!高速列車KTXだ!

日本スタイルの老兵通勤電車とフレンチスタイルの新型高速列車。運命のいたずらのような一瞬の離合でした。

南営駅に到着!

 



KTXとの離合を終えて、南営駅に到着します。左側の複線は京釜長距離線とソウル車両事務所とソウル駅を結ぶ連絡線です。


ソウル駅まではあと1駅です。

ソウル駅に向かう〜交直デッドセクション通過!

 

列車はソウル駅地下ホームを目指します。この区間は電鉄機関士にとって、最大の難所でもあります。

(中央上) 運行ダイヤを再確認。「定時!」
(右上) 信号機下の進路指示版アルファベットの「J」は「地下鉄」の意味。列車はここからソウル地下鉄公社管轄〜ソウル1号線に入ります。


(下3枚) 地下区間に入る前に電源が交流25000Vから直流1500Vに替わります。左下画像の白丸内が交直切替スイッチです。デッドセクション(死区間)を通過中に交流位置から直流位置に切り替えます。

ソウル駅を横に見て




直流切替が完了し、地上ソウル駅を横目に地下区間に入ります。交直デッドセクションは地下区間の入口で終わります。

ATS作動!


運転室内にベルが鳴り響き速度計に赤丸で囲まれた「45」の文字が。これはATSの警告表示で、運転速度が前方の信号の制限速度に接近するとベルと表示で運転席に伝達するものです。このほかにX,0,65(YG),90(G)の表示があります。

ソウル駅地下ホーム到着!

列車はソウル駅の地下ホームに到着。今回のイソウロウはここまで。
 

地下鉄ソウル駅

 

ここソウル駅は長距離線のソウル駅の下にあり、厳密には「ソウル駅」駅となっています(実際にソウル駅駅と言う地元の方はいませんが^^;)。日本的には「ソウル駅前」駅のようなニュアンスです。

(中央上下) ソウル新駅舎と共に作られた長距離線-地下鉄乗り換え用のエスカレーターと案内表示。

夜の電鉄線を後にする


広い道路と充実したバス網を持つソウルの街ですが、この電鉄線もソウル市民の日常生活の足として無くてはならない存在です。何気無しに乗ってしまいがちな通勤電車ですが、国は変われど運転室の緊張感と苦労は同じと感じさせられました。

韓国の地下鉄・電鉄開業から30年の2004年、日本から韓国にやって来た電車は韓国で仲間を増やし、独自の電鉄網を構築し、国の発展と共に独自の発展を遂げて新しい時代へと踏み出したことを実感しました。

韓国の電鉄・地下鉄網の発展は留まるところを知りません。今後も多くの新規路線でより便利に発展して行く電鉄線の未来と、その陰で日本から海を渡り最後まで第一線での活躍をした初期抵抗電車に心の底からエールを送りたい気持ちで地下ソウル駅を後にした…

イソウロウ日時
2004年5月

※「初抵抗(初期抵抗車)」としてファンに愛されたこの電車は2004年6月に全廃しました


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